瑞香科

日本語

果を見るに至らずと断言して可なるものゝ如し、元来三椏の枝葉ニハ異様の臭気ありて是を呧■れハ稍々辛烈の気味あり、是を以て鳥獣も是を食するもの尠く、稀に山間におゐて野産の嫩芽を食することあるに止り、虫類も亦食するもの尠く、稀に心食虫又は毛虫の生するあるのミ、要するに獣畜ハ嗜ミて食することなし、隅々食するも有毒の結果なし、静岡県下伊豆国加茂郡岩科村田代牧場及同国岩沢郡修善寺村桂谷牧場は牛馬を放牧せるに係ハらす場内別に墻■なき圃場に三椏を栽培せり、是れ牛馬に大害なきを証すへし、又兵庫県下の一部ニおゐてハ牛馬の桑樹を傷くるを防くため桑圃の園囲に三椏を栽附くるあり、さすれは牛馬是を嗜まさる故其害を免れ得へしとせり、以上の事実に徴するも亦其大害なきを証するに足るへし、然れとも独り三椏の種子は明に有毒の成分を含有するものにて人畜誤て之を食し、嘔吐腹痛下痢等を催し煩悶する事往々之あり、蓋し種子の含有する一種油分の作用に帰するものなり、然れとも是亦激烈必死と謂ふ程のものにあらさるなり、之を要するに三椏の茎葉は牛馬の嗜ミて