松柏科　柏譜

日本語

○桧（ひのき）と桧葉（ひば）の名目は知らさる人もなし、壱葉の品を人々に問ふにまちまちの説なる故、昔田村先生に問ふに、此人にも分明ならず、其後ある在方に功者なる杣あるよし聞及ひたるゆへ尋ね行、其者に問ふに杣のいふハ我と一緒に来り給ふべし、教へもうさんと鉞を持て山谷を越行、川端に山の出水を待、筏にすへき角木多く積あり、其木を鉞にてはつり、則は檜ハなり、此角は桧葉也といふ、予が尋るハ角物にあらす、木の葉にて見分る事を聞たしといへハ、葉ハ色々あるゆへ葉にてハ分らず、切てはつり木肌を見たれば分らずといふゆへ、予も遠方の所わざわざ来り、かくの如きゆへあきれたり○信州辺の山にハ桧又は桧葉の替り色々あり、茶保ひばも此国の山にハ大木あり、【草木錦葉集　一】