無花果科

日本語

然レトモ耕植ノ際決シテ闕如ス可ラサルハ、土中ニ白灰粗砂或磚石ヲ以テ乾堅燥硬ノ基底ヲ作ルニ在リトス、此故ニ年々無花果ノ豊熟ヲ保続セント欲スルニハ、此乾燥下壌ヲ設クルト柔土ノ深サヲシテ過甚ナラサラシムルトヲ以テ、凡一フートヨリ八インチ迄ノ間、園丁ノ一大要務ト記取スベシ、之ヲ培植スルノ法、且之ヲ延蔓セシムルノ法ハ頗簡易ヲ極ムル者ナリ、ローケルス氏ガ無花果疏樹法ノ最良ナル者ハ五六月ノ間只巨指ト食指トヲ用ヒテ新芽ヲ搯（ツマ）ミ去ルノミニテ、殆刀仔（コカタナ）ヲ用ヒルノ労無シテ云ヘルコト実ニ過言ニ非サルナリ、其樹枝殊ニ繁蔚ナルニ於テハマヽ全枝ヲ截除スベキコトアレトモ、此ハ非常ノコトナリ、又ナイト君ハ鮮嫩ナル緑芽ノ尖端ヲ緊圧シ、両指ヲ以テ其実質ヲ拑住スルニ、忽之ニ随ヒテ破断セントスルノ感覚ヲ生セシムルニ至ルノミニテ、無花果樹枝ノ甚シク繁茂スルヲ拒クニ足レリトス、適当ノ時候ニ於テ此果ヲ成熟セシメントスルニハ、果園家宜シク意太利亜及欧洲南部ノ諸邦ニ於テハ一年両度ノ収穫有ルコトヲ顧思スヘシ、英国ニテ夏月ノ末無花果樹結果性枝上ニ見ル所ノ巨大ナル果実、未タ熟セサル者、ハ温和ノ地方ニテハ春月已ニ発育シテ其登熟モ亦速ナルベキニ、此地冬月ノ寒威其長育ヲ遏止シテ、遂ニハ之ヲ腐壊セシムル者多シ、温和ノ地方ニ於テ八月中成熟スル所ノ収穫アレトモ、英国ニテハ晩夏中ニ発育シ、九月ニ至テ尚細小ニシテ殆ト見ル可ラザルガ如シ