桜譜

日本語

ひが事なり、桜の種類甚おほくして、ことことくあけかたし、うば桜花さく事いとはやし、葉なくして花さくゆへに名つく、ひかん桜に似てうす紅白なり、次にひかん桜、次にいと桜、又くまがへ桜はやし、次にひとへ桜、品類数種あり、其内ににほひ桜あり、香あり、ひとへ桜ハ其さかりわつが二三日の間なり、ちる事はやし、ひとへ桜すこし衰るとき、きりかやつさかりなり、此花鎌倉のきりかやつより出たりといふ、やうきひといふ桜少紅色をおびたり、又柴山、車返なといふ桜あり、いせ桜ハ八重にてこれも少紅色をおへり、摂津国伊勢寺より出たるといふ、一説桜のおはりにちかき頃さくゆへになつくといふ、伊勢ハ尾張にちかけれはなり、いせ桜ののち諸品のおそ桜ひらく、虎の尾は八重にして、葉あをし、泰山府君、塩がまもおそし、とらの尾と一時にさく泰山府君花の色しろく葉青く、むかし此花のちる事をおしみて泰山府君の祭をなせる故に名つくといふ、塩かまは葉も花も少あかし、花のミならすはまでみるなる故、しほかまと名つけたし、江戸桜はいと遅し、葉少あかし、是桜のおはりに盛也、今とき知恩院安井におほし、仁和寺ことに多し、いと遅し