桜譜

日本語

色わけそむる、ころにはや、若葉催し、ほころふを、散さぬ風の、たよりとて、心有人の、見せはやと、折こせはこそ、けふ見そめつれ、反歌、はつ春の初花さくらめづらしき都のむめのさかりにそ見［　］、猶此外に都鄙の詩人歌人俳人など見［　］吟詠して賞翫す、予の彼国に植ひしは四月［　］、しかは花の時におくれて見ざりき残［　］彼国の人に此さくらの由来聞し［　］、老人有けるが年毎に花をさく［　］神たのみすくなくなりけるが此花の［　］花を見すして、死る事のみなけきて今［　］て死しなば浮世におもひ残するもあらしな［　］聞へければ、その子かなしみなげきて、此桜［　］以て何とぞ我父の死し給はさる前に花を咲せ［　］れと誠の心をつくして、天地に祈り願ひける、その孝心［　］神に通しけん、一夜の内に花咲みだれ、あたりも三［　］頃ののことくなりけり、この祈りける日が、正月一六日也、けれ［　］其後は今の世に至る迄も猶正月十六日に咲けるなりとぞ、其由来も又ただしかりぬ、又伊勢国白子と云所