自ミ至テ

日本語

貪りて、爐辺へ近き雛鶏ハ頻りに小石を掘り撹ぜ、家鶏ハ芥の中に集まるを常とす、其他蝿の人を螫すこと激しく、蛙の騒々しく鳴き、蚊の樹下に群れ、馬の暴れ廻ハるを見るべし、又鵝雁の風に逆ふて飛び、蜘蛛の壁上に集り、蝦蟇の夕に出ること多く、鳩の巣に帰ること早く、孔雀の夜る鳴くが如きも皆雨の前表なり、凡そ動物として天気の変化を予知せざるものハあらす、蓋し空気に変化を生じ、従て電気の関係を乱るより、自然に其体に感ずる所ありて、其挙動を変するに至るなり、現に動物学者ハ雨中に猫の狂奔するを以て電気の関係なりと云へり、人間に至りてハ、下等動物の如く天気の変化を感ずること敏捷あらざれども、雨前に頭痛又ハ歯痛を感し、持病のリユーマチスを引起す者多きハ疑ふべからざることなり、明治十八年十月四日【朝野新聞】