山茶科

日本語

○和名山シキミトイヘル木ヲ邦俗樒ノ字ヲ用フ、本草家ハ莽草ニ充ツ果シテ是ナリヤ、予ハ物産ニ疎ナレハ当否ハ知ラス、今都鄙トナク此木ヲ必墳墓ニ供スルコト天下一般ノ俗トナレル、此木仏家ニ因縁アル事、法華経第一巻ニハ、或有起石廟、栴檀及沈水木櫁并余材甎瓦泥土等、疏木櫁者長安有木名、櫁任造像、已上是乃栴檀沈香櫁木等ハ清浄ニシテ香気アル故ニ仏像等ヲ造リ、又仏前ニモ供スルト見タリ、然ニ宇治荒木田神主久老カ万葉考槻乃落葉ニ吾弟（ワガマナヒ）子西村重波か疑けるは神楽歌に、榊葉（サカキバ）の香乎加倶波志美覚来（カヲカクハシミトメタ）れは八十氏（ヤソウチ）人曽満登比世利介流（ソマトヒセリケル）、とあるに貫之の歌にも、おく霜に色もかはらぬ榊葉の香をやは人のとめて来つらへ【新古今集】、源氏榊の巻にも、をとめ子があたりとおもへば榊葉の香をなつかしみとめてこそ来れ、とあれは必葉に香気あるへきに、橿も今の榊も美者々木も葉に香気なけれはいにしへの賢木（サカキ）にはかなはすやといへり、是もひとつの考なるべくおもひて、今按を加ふるに、和名抄新撰字鏡／【善庵随筆　上ニ二】