松柏科　榧譜

日本語

○しふなし榧、関の秋風、此頃桑名長寿院のもとよりしぶなし榧といへるを送りぬ、こは珎（めづら）しき物なれ、しぶなしてふはことごとしき名かなとほゝゑみて開き見れば、実も常よりハいとうつくしく、わりて見れはしぶの表ハなく、白妙のはたあらはれたり、見るもの皆おどろく、其箱の傍にかひたるものあり、ひらき見れば祖公の御馬上にて接き玉へし木なり、其後いかに実をうへ、枝とりても多く生出（はえ）ず、生出てもかるゝ、今ハ其樹の霊をしりて枝など折る者もなしとや、いとたうときことなり、予常に榧の実を好ミて食ふ、祖公にも好み玉へしと云ふ人ありければ、藩翰の任をめくることいかでか祖公の烈にしたがふことなりなん、｛明治十六年三月廿四日、【農業雑誌】、朱書｝／越後中越平田上村ツナキ框、三四寸、看守アリ、比葉、七ツ、或ハ五ツ、六七ツツナカリ熟ス、皮ハ続キ、実ハ一個ことニアリ、門主ノ越後ニ来ルトキハ是ヲ付フト云、山高氏ノ記、カヤ／榧〈大隅国各郡〉、【日本地誌提要　七】