松柏科

日本語

はらはらと葉広柏の露の音、泉川、■懐紙、親と碁を打■乃つれつれ、文鱗、餅作る楢（ナラ）の広葉をうち合セ、枳風、此葉広柏、楢の広葉と句作れる、皆柏餅に作るかしは也、是ハ槲ノ字を用ひてよろし、左のことく心得て柏の字を用ひ直用なすハ那俗に従ふなり、我物知顔に改るハ通用に患ひありてよろしからず、されはとて心得ざるハ文盲乃甚なり、歌道にハ世々の先達博識出て知りても改ず置れしを以て歌道の伝授とせられたりと或人のゐひしをきゝぬ、尤尊むへき事也、されど蕉翁の誹諧ハ和漢の事をつまみあわせて風雅を尽す、なれは漢字の正しきを尋求むへきも多く、鳥獣草木の名を識（シ）るの端（ハシ）くれならすや、此道に志ざゝんものハ山樵浜漁のいやしきも俗談平話の正に帰せしめ、品物の雅名をも知りたらんハ俳のみやびならさらんや、又問、かしはと云和語如何、答、かしむはとハかひしきばといふの縮語にしてひの木児の手かしはこさいば広葉なら等ミるかひしきに用ゆるものをいふ事也と知るべし