桜譜

日本語

十六日桜｛（いさよひさくら）、朱書｝、｛■■■■老人、【西遊記】、朱書｝、｛れん抄写、朱書｝○伊予国松山の城下の北に山越といふ所あり、此所に十六日桜とて毎年正月十六日にハ此さくら満開して見事也、松山より花見とて貴賤群集す、寒気面をそき、余雪梢を封する頃に此桜のミ色香めでたく咲出れハ遠近の人ともにもてはやして、殊に其名高し、過し年、先太守より和歌の御師範京都の冷泉家ヘ此花を贈り給ひし事あり、其時冷泉殿より御返事の御歌有、十六日さくらといふ花を頃しも睦月半のたよりに折こせしを末の四日に都に来りつきて、色をうるハしく驚くはかりの初花さくらの花になん、賞玩ノ辞、きゑのこる、雪かとみれハ、年々の、む月半に、さくといふ、初はなさくら、はつ春の、柳の木のめ、それもまだ、色別そむる、ころにはや、若葉催し、ほころふを、散さぬ風の、たよりとて、心有人の、見せはやと、折こせはこそ、けふミそめつれ、（十六桜、抹消）反歌、初春のはつ花さくら珍らしき都の梅のさかりにそ見る