桜譜

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○小石川の区長内藤聡叟氏より、其郷の青山春夢翁か著述の桜史新編一冊を贈られましたが、其書は桜花の美ハ我邦の独り壇にする所なるを証し、花神名区名花雑記の四門に分ち、大凡そ桜花に係る典故ハ広く旁引したれハ、独り風流の為めのみならす、一種欠く可からさる史編なるか、猶訪採未た遍からす一二の憾む可き無き能ハされハ、固陋を顧みす、左に誌すハ奥州三春の瀧村に瀧の桜と称する非常の大樹あり、幹の大さ男帯四條を繋きて始て周るへく、花陰三百畝を蔽ふに足る、是れ我友清須美為忠か其郷に在りて、常に観る所、又北海道択捉州にも虎の尾桜、球桜の名花数種あることハ予嘗て其地を過る記中に書し、又沖縄県より来る琉球寒緋桜は其花陽暦一月を以て開き、色の妍（けん）なる臙脂（えんし）に過き、又嘗て江戸麻布に住せし、久保桜癲が園には三百余種の品類を集め種へ、既に其成書も有たりと鋤雲老人か桜塘第一曲の観花寓より郵書の侭掲けます、十三年四月八日、【報知新聞】