薔薇科　桃譜

日本語

竪に樹皮を剥き、膠をして盡く出しむれは、永く結実して肥大美良の子を結はしむると得べし、然れとも余り多く結菓する時ハ往々墜ち朽るものなれば、花既に謝し去り、枝々実を結ぶに至らば務めて其繁きを摘み、其多きを去り、枝上適宜に実を存せしめなば、亦美良肥大の菓を得べきなり、之を蕃植するに実植挿木接木等の法ありと雖も、新種類を得んにハ実可なり、好種類を求め速かに生長結実せしめんと欲せば、接木法可なり、好種類を求め速かに生長結実せしめんと欲せば、接木法可なり、決して実植すへからず、左に掲くるハ桃の種類を示すものなれば、世上好桃の諸子、実の早晩大小より味の甘酸淡等を知り、或ハ実益を去り、花の爛熳芳菲たるを愛せんと欲せば、宜しく此譜に就て求めよ、アムスデン（肥大美良の実を結ひ桃中の最上等に位すと云）、オルリー、ルイス（早熟種中のものにして、又佳良なるものなり）、ハール（甘酸中を得て食後に用ゐて最も佳なり）、セルレート、オルリー、ヨーク（早熟種にして甚だ上品の好味あり）、ラーヂ、オルリー、ヨーク（早熟にして甚タ大なり）、クローフォルドス、レート、フリー（晩熟と雖も亦好味の種類也）、クローフォルド、オルデス、ゾン、フリー（前種に比すれバ早熟す）、水蜜桃（味ひ最も甘美にして恰も蜜の如くなり）、銀桃（単弁にして実円く、色青白なり、肉核に粘せして味又美也）、人面桃（又美人桃とも名つく、実少なりといへども花千葉にして甚美）、白碧桃（単葉千葉の二種ありて、単弁のもの惟実を結ひて甚た繁）、咽脂桃（単葉にして紅、実熟すれは其色胭脂の如し）

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