無患樹科

日本語

七葉樹、トチ／トチノ実、一、木曽の橡（トチ）の実、栃（トチ）の字同物異字なりや、木曽にて橡の実といふは和名どんぐりと云、此木古名はははその木と云、又つるばみとも云、今はくぬぎと云也、東国にてはこならと云、その実則どんぐり也、信州にても通してどんぐりと云、木曽にてとちの実といふ、因て句有、木曽の橡浮世の人の土産かな、はせを、漢名は橡実（シヨウジツ）と云、檞（コク）と一類にして二種也、栃、漢名七葉樹（シチヨウシユ）云也、又檪（レキ）をならと訓ス、正字也、イチイト訓するは少し違なり、いちいは檞ナリ、今関東にておほなら也、是に対して檪（レキ）をこならといふ也、楢（ナラ）の字を用るは不詳、別物也、くぬぎに楩（ヘン）の字を用る非也、椚（クノキ）は俗字也、檞（コク）の字をかしはと訓するもよろし、栩（ク）、杼（ヂヨ）二字ともにとちと訓す、正字ナリ、橡（シャウ）、杼（チヨ）、柞（サク）、檪（レキ）、栩（ク）一物異名也、桃木（ハハワキ）といふ時は別物也、杼ををさとも訓ス、皀茶色（クロチャイロ）ヲつるばみ色と云、橡の実の帯（ヘタ）の付梂を以て衣服を染る也、江戸にてよめのごきト云、漢名（土）にて皀色（クロイロ）を染るといへり