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蟲譜図説十二

引用
『蟲譜図説十二』(名古屋大学附属図書館所蔵)「伊藤圭介文庫 錦窠図譜の世界」収録(https://da.adm.thers.ac.jp/item/n002-20230901-02240)
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ID
M2005033014482012032
コレクション内カテゴリ
  • 錦窠蟲譜
書名
蟲譜図説十二
別タイトル / 旧書名
Vol. 011 蟲譜図説十二
巻次
011-016
本文言語
日本語
内容注記
名称: イトヒキアジ, 学名: Alectis ciliaris
翻刻・翻訳
此魚往年、南紀公珍蔵ノ魚図ニアルヲ観テ奇ナリトシテ謄写ス、此魚譜ヲ紀海群鱗ト命ス、三巻今家■トス、其他ノ方言絲ヒキ鯛ト呼フ、頭ヨリ尾ニ臻ル僅ニ三四寸許、脊ト腹ノ線鬣ハ至テ長ク尺許アリ、其細長純白ナル、恰モ白髪ヲ撒乱セルカ如シ、其後年蝦夷地ニテ綱得タリト云テ、風乾ノ一小魚ヲ見タリ、名ハ不知ト云テ鋻定ヲ予ニ乞フ、是ヲミルニ又即此物ニ同シ、又庚辛歳仲秋、参政堅田侯ヨリ新鮮ノ一小魚ヲ恵贈セラル云、魚戸偶々齎来レルノ由、其名ヲ朱クリト(云、抹消)呼フ、予是ヲ覩ルニ、又前条ト同物ナリ、是ニテ写真ハ(是ツ、抹消)見ツレ共、生魚関東ニハ絶テ無有者ト思ヒシニ、不図始テ目撃セルヲ奇ナリトス、抃躍ノ余直シ手写シテ家蔵セリ、此物ニ於ル漢名ノ的充スベキモノアリヤト、諸家本草及府県志類、其他群籍等ニ至ル、逐一渉猟スルニ察々所見ナシ、紀陽方言ニ絲牽(ヒキ)鯛ト唱フト雖トモ棘鬣魚ノ類ニモ強テ充難シ、東都魚戸俗呼鏡ウオト云フモノアリ、形扁平ニシテ円力(ズミ発明セ、線引抹消)ニ脳上高ク起リ、鯧魚ノ形ニ彷彿タリ、只肚下ニ鰭ナリシテ、五条ノ白縷ヲ牽ク、若ヤ此類ニシテ奇品ナルベキ乎、又ギチト呼モノヽ類ナリヤ、今茲ニ一奇話アリ、予嘗テ九州ノ漁夫ノ語ヲ聞クニ云、海中ニ異形ノ小魚ノ游泳スルヲ偶々見ルコトアリ、其形極テ小ニシテ四角ナリ、脊上肚下ニ長キ白縷アリテ、素麺ヲ浸標セルガ如ク、甚壮観ナリ、其魚五彩燦爛トシテ光艶目ヲ奪フ、此日縷ノ長キコト其躯ノ三四倍ナリ、此魚ノ尾後ニ数多ノ小魚従行シテ、渠カ縷端ヲ啣ミテ牽駐シテ、或ハ近ツキ触テ渠カ涎沫ヲ舐リ、或ハ身ニ塗ル作体ニ似タリ、其情態恰モ時行(トキメキタル)ノ娼婦ヲ衆人争見テ目ヲ娯シテ心楽ニ異ナラズ、是衆鳥ノ木免ニ於ル馴脆キ戯笑スルニモ似タリ、其土人コレヲ龍王ノ愛童(オチゴ)、又ハ乙姫ノ近侍(コシモト)ト称シテ貴重ス、偶綱シ獲ルモ直ニ放縦スト云、今憶フニ他ナシ、ヤハリ此魚ノコトナリ、此奇話ヲ刻意シテ記憶シ居タリ、年所ヲ歴ルマヽ遺忘セシニ、茲ニ今本草綱目鯧魚ノ条ヲヨミテ、ハカラズモ発明セリ、其故ハ、時珍曰、鯧之為言昌也、美也以味名、或云、此魚游於水群魚随之、食其涎沫、有類於娼、故名クト云云、予囚此始テ知ル、此小魚ハ真ノ鯧魚ナルコトヲ、啻ニ其味ノ美ナルノミナラス、形状ニ於テモ婀娜トシテ可愛モノナリ、人偶コレヲ見ル者珍玩トシ
科目
魚類(スズキ目アジ科)
来歴・典拠・由来
蘭畹摘芳
所蔵機関
名古屋大学附属図書館
メタデータ提供者
名古屋大学附属図書館
資料種別
和古書
画像有無
カラー
コレクション

伊藤圭介文庫 錦窠図譜の世界

日本における近代植物学の祖といわれる伊藤圭介の稿本(手書き本)188冊を集めたもので、その中には、錦窠植物図説、採草叢書の他、錦窠魚譜、錦窠虫譜等があります。
所蔵機関
名古屋大学附属図書館
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