桑科

Japanese

桒ノ説アリ／○貴社新聞第二百四号に備中国尾崎村荒木猿山君の言に、予近来桑樹培栽（うえつけ）に注意せしが、市午桑魯桑と唱ふるハ葉の大さ縦横（たてよこ）一尺余蓁々繁茂云ふべからす、又た葉の大なるハ朝鮮桑なり、其他種類屈指（なだたる）に遑（いとま）あらすと云へり、養蚕は国産の第一にして最も美事なり、荒木君は実に物産に注意深き人と称すべし、次きに陸前国根岸村佐々城氏も亦た養蚕に注意し桑の良種なきを憂ひて遙々備中の国より移し栽（うえ）んとする、其志称するに堪たり、共に国益を謀る可き人なり、僕も亦聊か線に微（から）ハんと欲す、抑も青森県の如きは荒槁不毛の地甚た夥し、願くハ桑の良種を得て培栽せば、他日鴻益を興すべし、特り私欲を逞（たくまし）ふするに非す、衆人と共にせんとす、希くハ荒木君僕の百を允若（おんぶ）して愛憐を垂れ、市午桑魯桑朝鮮桑の三種を鳫書へ封入して郵便に贈り賜らバ、忻喜に堪へす、且願はくは其居所を詳かに報知するを蒙らば速かに荅書を以て其鴻恩を謝せんとす、荒木君真に国家の鴻益を計らハ衆人と力らを協せて養蚕を熾（さか）んならしめよ、養蚕を熾んならしむるにハ、桑の良種を撰んて培栽するにあるべし、蓋し桑の善なるを以て養ふと不善なるを以て養ふとハ譬ハ人にして、肉食すると荑程を食するとの差等（たとひ）あるが如くなるべし、佐々城君へも贈れ、佐々城君ハ陸前にて熾んに培栽し、僕ハ陸奥にて培栽すべし、願くハ皇国中に蔓延せんことを、先般橋爪幸昌君の投書に外債を消却するの論あり、其志ハ実に賛美するに堪へす、然りと雖も其事ハ未だ善を