石南科

Vol. 075 石南科

伊藤圭介

Japanese

金華山モ是ニ似テ此樹ノ鹿ニ喰ヒ残サレテアルコトヤ亦奈良ニ同シ、凢ソ俗ニ毒流シト称シ、毒木ヲ水流ニ入ルレバ、魚其毒ニ酔フテ浮ブモノニテ、之ヲ掬ヘバ容易ニ捕ヘ得ベキナリ、ソノ中毒ノ魚タリトモ、人之ヲ煮喰フテ害アルヲ観ズ、又酔魚草ハ和名フヂウツギト呼ブ一小潅木ナリ、漢説ニ此品モ亦毒アリ、漁人采花及葉以毒魚尽ク圉々（クルシミ）トシテ死スト、コノ植物ノ毒ニ酔フテ浮フヲスクヒテ亦容易ニ捕ヘ得ベキヲ云ヘリ、我西国ニテモ此酔魚草ノ枝葉ニ石灰ヲ和シ魚ヲ毒シ捕ルモノアリト云、石灰ハ固ヨリ魚ヲ毒スルモノナレバ、故ニ相合スレバ更ニ其毒スル力ヲ増加スルコトナルベシ○馬酔木モ牛馬ノ此木ノ枝葉ヲ食ヘバ此毒ニ中リ酔フガ如シ、故ニ他ノ植物中ニ混雑シアルトモ之ノミハ食ハズシテ、若シ不意ニ食ヘバ、其状酔フガ如キヲ以テ、此和称アルナリ、酔魚草ノ名ニ擬シタルモノカ、或ハ暗合セシモノナリ、下学集云馬酔木（アセボ）、馬食此葉則死、故云馬酔木、有和歌云、取繋玉田横野放駒躑躅岡馬酔花発（ツヽジノヲカニアシミハナサク）云々、是魚類モ牛馬モ酔フモノナルコト知ルベシ○木村正辭翁ノ考ニ万葉集に馬酔木をよめる歌凡六首あり、古版本の訓ハいづれもツヽジとあり、但し古くハ此馬酔木にツヽジ又アセミの両訓ありしよし、顕昭の散木集の注に見え、又古今六帖、赤人集、家持集などに万葉の歌を載せたるにもアセミとよめると、ツヽジよめるとがあるなり、さて此

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470.3-I-75(93)

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