石南科

Japanese

羊躑躅ハレンゲツヽジナリ、亦毒物ニシテ羊之ヲ食ヘハ躑躅ニテ死ストアリ、植物名彙図考中ニモ此品ヲ毒草中ニ入レテ其衣研末水浸殺菜蔬虫トモ云ヘリ／にて其意をもてかけるにてもあるべし｛是マテ、朱書｝、万葉集中に出たる馬酔木の歌ハ左の如し、礒のうへに生ふる馬酔木（ツヽシ）を手をらめと見すへき君かありといはなくに、巻二、朱鳥二年春歌、うちなひく草香の山を夕くれに吾こえくれは山もせにさける馬酔木（ツヽシ）のにくからぬ君をいつしか往てはや見む、巻八、春雑歌中長歌、○凡ソ俗ニ毒流シト称シ毒木を水流ニ入ルレハ魚其毒ニ酔ヒテ浮ブモノナリ、之ヲ掬ヘハ容易ニ捕ヘ得べキナリ、ソノ中毒ノ魚タリトモ人之ヲ食フテ害アルヲ観ズ、又酔魚草ハ和名フヂウツギト呼ブ一小潅木ナリ、潢説ニ此品モ亦毒アリ、漁人采花及葉以毒魚尽ク圉々（クルシミ）トシテ死スト云ヘリ、コノ植物ノ毒ニ酔フテ浮フヲスクヒテ容易ニ捕へ得フベキヲ云ヘリ、我西国ニテモ此酔毒草ノ枝葉ニ石灰ヲ和シ魚ヲ毒シ捕ルモノアリト云、石灰ハ固ヨリ魚ヲ毒スルモノナレバ、故ラニ相合スレバ更ニ其力ヲ増スコトナルベシ○馬酔木モ牛馬ノ此木ノ枝葉ヲ食ヘバ此毒ニ中リ酔フガ如シ、故ニ他ノ植物ノ中ニ雑ハリアルトモ、之ノミハ食ハズシテ若シ不意ニ食ヘバ、其状酔フガ如キヲ以テ此称アルナリ、酔魚草ノ名ニ擬シタルモノ歟、或ハ暗合セシモノナリ、右ハ酔ノ字ノ解