石南科

Vol. 075 石南科

伊藤圭介

Japanese

｛フモノナリ、酔桃李花ナド形容文字ニハ非ザルナリ、又下学集云、馬酔木（アセボ）、馬食此葉則死、故云馬酔木、有和歌云、取繋玉田横野放駒躑躅馬酔木花発云々、又羊躑躅ハレンゲツヽジナリ、亦毒物ニシテ羊之ヲ食ヘハ躑躅シテ死ストアリ、植物名実図考中ニ、此品ヲ毒草中ニ入レテ其研末水浸殺菜蔬実トモ云ヘリ、朱書｝、かくて茵芋ハ嫩葉紅葉にして甚愛すべき色なりといへバ、これによりてにつゝしといひ、又馬酔木の酔字も其葉の紅色なるよりおもひよせたるならん、｛茵芋（ミヤマシキミ）ハ嫩葉紅赤、甚愛スベキト云モノニ非ズ、但葉ノ蒂（ヂク）赤色ナルノミ、朱書｝、又茵芋も本草綱目に毒草ノ部ニ収メたれば、図より馬の毒にて其葉をもてかけるにてもあるべし、万葉集中に出たる馬酔木の歌ハ左の如し、礒のうへに生たる馬酔木（ツヽシ）を手をらめと見すへき君かありといはなくに、巻二、朱鳥二年春歌、うちなひく草香の山を夕くれに吾こえくれは山もせにさける馬酔木（ツヽシ）のにくからぬ君をいつしか往てはや見む、巻八、春雑歌中長歌、かはつなく吉野の河の瀧のうへの馬酔木（ツヽシ）の花そおくにまもなき、わかせこに吾こふらくハ奥山の馬酔（ツヽシ）のはなのいま盛なり、巻十春相聞

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