薔薇科

Japanese

試みに、試みに異朝の書に見へたる木瓜注を茲に記るして委く弁ず、図経本草に曰く、木瓜、木状如柰、マルメロと云ふ木の状、世に云ふリンゴに同じ、リンゴと云ふ者ハ柰の一類にてある也、春末開花深紅色、マルメロの花一重にして梨子の如くにて少し紅なること海棠にまされり、其実大者如瓜、マルメロの実の形少々細長く、頭に鼻ありて瓜の如し、是れ所謂る大木瓜なり、小者如拳、マルメロの実小なるハ握り拳ほとある也、是所謂小木瓜也、上黄似着粉、マルメロの実の色黄にして粉をふきし如くにある者也、実成則鏃紙花粉於上、マルメロの実始て成りし時に瓜の如くに花つきの処に花の萼と云ふ者五弁並に花の蘂其まゝに粘てある也、夜露日煤漸変於紅花色、マルメロの実後にハ斯の如し、看蒂間別有重蒂如乳者マルメロの蒂つきの所の如し、図に見へたり、其蒂斯の如くならぬを樝子と云ふ也○大観本草曰、始実成則〓紙花薄、其上夜露日暴〓、〓字誤〓、以長縄繋牛馬也、薄広被也、異本〓作〓誤写耳、薄其上三字一本作粘放上亦通、木瓜の実の未だ熟セさる時紙にて花形ヲ造り、実を覆ひかぶせくゝり置ば、実熟する時其花形のあと紅色に変じ生の如し○雷公炮炙論に曰、真木瓜皮薄、色赤黄、香而甘酸不渋、マルメロの形、色、気味斯の如し、其向裡子頭尖一面方、マルメロの核の形即此の如し○本草綱目に曰、木瓜葉光而厚、マルメロの葉、リンゴの如くにして厚き者也、其実如小瓜而有鼻とハ瓜の花をちの所を云ふなり、マルメロの実大きに成て此の如し、されば瓜と云ふ名ハある也○右諸説の如くなれば、木瓜ハ舜水の云ひし如くマルメロたること疑ふ可らず、此物の類殊に多し、されば異朝にもマルメロをばすべて木瓜とも真木瓜とも云ひ、其大なる者を大木瓜と云ふ、是れ木瓜の極て大なる