漆樹科

Japanese

○製皮科、昨年獨逸より帰朝されし山林学士中村弥六氏の談なりとて、或人の曰く是まて西洋各国にて、製皮の料に木皮の渋のみを用ひし処、近来五倍子の渋を用ゆるの宜しきを発明せしより、是まて高価なりし木皮は、頓に其価を失ひ、五倍子の価騰貴するに至り、獨逸等にて、深山にて樹木を炭に製すも、運搬の便ならざる地には、五倍子を培養して、他国へ輸出せり、余曽て獨逸に在りし時欧州各地に産せし五倍子と日本産の五倍子とを比較試験せしに外国産は、百文中にタンネ―サン製皮に要用のもの五四を得、日本産は百分中に九八を得たり、以て日本産の外国産に優るを知る、然らば、是まで人の顧りみさる白膠木、五倍子の生する木を山間不毛の地等へ多く培養し、タンネ―サンを製し、製皮に名ある英仏等へ輸出せば、一の国益なるべく、又我邦にても之を用いて皮を製せは、輸入品に劣らぬものを製出するを得べし云々｛右明治十六年五月五日報知新聞ニ出、朱書｝／樗（ヌテ）、陸詞切韻云樗、勑居反和名本草云沼天、悪木也、弁色立成云、白膠木、和名上同｛中有白膠者也、略、【和名抄巻五】、朱書｝／decocaon of nut-galles 百薬煎、nu nutgalls 百薬煎又五倍子トアリ