無患樹科

Japanese

花秋後結実如栗可食正所謂七葉樹也といへり、その娑羅樹は則番僧称する所の名にして、救荒本草の橡子樹と全く一様也、これまた其花黄色なるものといへ共、其実は邦産と蓋し同種なるへし、又勅号記に止久利の名あり、これは止知久利の略語にて、其実全く栗実に似たるによりて名付く也、今俗呼為度牟久利ものは即止久利の訛転也、今その柞実及ひ櫧実を以て、また度牟久利といふは、二樹共に其実極而小なりといへとも、橡と頗る相似たるをもて仮借して同名を命せし也、又唐本草橡実条に其殻為散及煮汁服主痢并堪染用といへり、予此頃此実両三箇を得て、其皮殻を取て濃煎となし白布を染ぬれは茶褐（黒、抹消）色をなせり、延喜式にいはゆる橡東絶、又橡帛なとあるはまたまた此たくひに染し様なるへし、或人は其実の梂彙（寄、訂正）回裹するものをもつて黒色を染るといへり、そは予いまた試みず、扨郭璞注尓雅に杼は柞樹といひ陸璣疏に今柞檪也といへるは俗にいふ久乃木にして古乃