無患樹科

Japanese

橡実考、遜按橡実は即今の止知の実にして柞実（クノキノミ）にあらす、和名鈔染色部橡を以て都流波美と訓するものもまた止知の実也、その都流は都良とおなし意にて即群列の義也、まさに鶴を都流と訓するものと其義一様、その都流波は蓋し都良奈利波の肖呼にて此樹はすべて毎茎上に七葉或は五葉つつ相連りて群列をなす故にかくは名付、美はまたまたその実をいふ、依此考之都流波美は今の止知の実たる事おのつからならいたし、その橡は即天象の象及ひ、象牙の象をきざと訓するものと同（し凡、抹消）、此木を板となして器物を作る時は文理斑点ありて甚た美なるよりして別にし書けし字也、これは木理文章あるをもて樟といへるにおなし、その杼といひ栩といふも各々其義のかはれる所あり、杼は字書に杼と同しとて其葉長して頗ふる織具の梭に似たるより名付、栩はまた此葉のやや鳥羽に似たるによりて名付く也、これらは其土地の方言といはいへど、人々おもふ所それそれにかはれる事あるによりて、其名を命する事もまた異なり、されどその樹はすべて一様也、又