自ミ至テ

Japanese

イシクヒムシ、表、裏／本州熊野浦神浦（かみうら）海辺石上に巣をつくる、土人石喰虫といふ、形白膜子衣（ヒラタグモノス）の如にして小なり、其中に大さ二分許の虫あり、形円扁にして八足、前螯長し、全身淡鼠色なり、土人の説に此虫ただ此石をのみ喰ふといふ、其石を軟にして鼠色なり、石面に虫の喰し跡みける、全く波濤にて虫頭の形をなすにあらす、予此石を缺来りて彼虫を入れ畜ふるに日久くして尚活動す、顕微鏡を用ひて此虫を写書すもの右に図するが如し、漢名いまた考へす、右【桃洞遺筆】／此虫畳ノ間ヨリ出タルヲ一見ス、蟹ニヨク似タリ、色ハ犬ノタニノ如シ、形如図、図ヨリ与サシ、是ハ虫目ガネニテ見タル形ナリ

桃洞遺筆