医学教育の根幹を支えた人体解剖掛図
専門課程に進んだ医学生がまず学ぶのは,人体の複雑な構造を扱う解剖学です。パソコンもスライドもない時代,人体解剖学の講義では,教室の前に吊られた解剖掛図を教員が指しながら説明しました。岐阜大学医学部には実際に昭和期の講義で使用された534点の人体解剖掛図が,すべて残っています。この掛図を描いたのは,第一解剖学教室の技官であった丹下年男画伯(1917~1984年)でした。
丹下画伯は歴代解剖学教授の指示で,著名な解剖図譜や論文の解剖図を,絵画用紙や時に“美濃和紙”へ模写しました。カラーもあれば白黒もあります。大きく拡大して描く際に,全体のプロポーションを維持するために,元絵にマトリクス(碁盤の目)を当てて,方眼ごとに拡大して描くという画法を用いたようです。描かれた解剖図の上下に軸木を取り付け,上端に紐を繋いで吊れるようにすれば掛図となります。
スライドやパソコンの出現で不要となった掛図は多くの大学で廃棄されたと思われますが,岐阜大学医学部ではすべての掛図に表装を施し,良好な状態で保存してきました。現在,人体解剖掛図は岐阜大学図書館内の“アーカイブ・コア”に所蔵・展示され,サイエンスアートとしての新しい価値を放っています。
人体解剖掛図整理解説:岐阜大学医学部教授 千田隆夫
人体解剖掛図デジタル画像化:岐阜大学連合農学研究科 塚原一颯
岐阜大学応用生物科学部教授 川窪伸光
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