自讃歌切

枡形本列帖装両面書、残欠２紙（８頁分）。『自讃歌』、５～５４（脱落あり）。６４行。「うつれはかはるなけきせしまに／なかめはやかみちの山に雲きえて／ゆふへの空にいてん月かけ／みつかきやわか世のはしめ契おきし／そのことのはをかみやうけけん／式子内親王／山ふかみはるともしらぬまつの戸に／たえ＋＋かゝる雪の玉水（以上第１頁）／なかめつるけふはむかしに成ぬとも／のきはの梅はわれを忘るな／なかめわひぬ秋よりほかの宿もなし／野にも山にも月やすむらん／きりのはもふみ分かたく成にけり／かならす人をまつとなけれと／きみまつとねやへも入ぬまきの戸に／いたくなふけそ山のはの月（以上第２頁）／夢にても見ゆらん物をなけきつゝ／うちぬるよひの袖のけしきは／忘てはうちなけかるゝ夕へかな／われのみしりて過る月日を／玉のをよたへなはたへねなからへは／しのふることのよはりもそする／いきてよもあすまて人はつらからし／このゆふくれをとはゝとへかし（以上第３頁）／それなからむかしにもあらぬ秋風に／いとゝなかめをしつのをたまき／摂政大政大臣／みよし野は山も霞て白雪の／ふりにしさとに春はきにけり／あまの戸ををしあけかたの雲間より／かみよの月のかけそのこれる／雲はみなはらひはてたる秋風を（以上第４頁、以下１紙４頁分欠）／山さとにちきりしいほやあれぬらん／またれんとたに思はさりしを／わかたのむなゝのやしろの夕たすき／かけても六のみちにかへすな／権大納言通光／みしまゑやしもゝまたひぬあしのはに／つのくむほとの春かせそ吹／むさし野はゆけともあきのはてもなき（以上第５頁）／いかなる風のすゑにふくらん／あけぬとて野へより山に入鹿の／あとふきをくる萩の下風／さらに又くれをたのめとあけにけり／月はつれなき秋の夜の空／あけほのやかはせの波のたかせ舟／くたすか人の袖の秋きり／みねこゆる雲に翅やしほるらん（以上第６頁）／月にほすてふ初鴈の声／なかめ侘ぬそれとはなしに物そ思ふ／雲のはたてのゆふくれの空／かきりあれはしのふ〔の〕山のふもとにも／おちはかうへの露そ色つく／なをてらせよゝにかはらぬおとこ山／あふくみねよりいつる月かけ／あさちふや袖にくちにし秋の霜（以上第７頁）／わすれぬゆめを吹あらしかな／左衛門督通具／梅花たか袖ふれし匂ひそと／はるやむかしの月にとははや／あはれ又いかにしのはん袖の露／のはらの風に秋はきにけり／かけやとす露のよすかに秋くれて／月そすみけるをのゝしの原」。